「やっ…てみたい、かも…」



気づいたらそう言っていた。



あたし、きちんと勉強してみたい…。



奏はふっと優しい表情で笑った。



「じゃあ俺んち行くぞ~」



というわけで、奏の家に来た。



家の中は、外と違って誰の視線も気にならなくて嬉しい。



外にいたら誰かしらには必ず見られてるもん。



あたしが可愛いから…。



いつもはリビングだから、奏の部屋に入るのは初めてだ。



柚子ちゃんはお仕事で、ご両親も不在。



二人きり。



やばい、なんか緊張する…。



それに…。



『お兄めちゃくちゃエロいでしょ!?』



柚子ちゃんの言葉が脳内によみがえる。



えっこの状況やばくない!?



「奏、エッチなことしようとしてる!?」



思わず口にしてしまった。



何言ってんのあたし!



「は!?」

「だって誰もいない家で二人きりで勉強って…。エッチの前兆でしょ…?」

「何だよその偏見…」



だって前の彼氏がそう言ってたもん…。



奏はカバンから教科書を出して広げ始めた。



「始めるぞ~」

「はーい…」

「ちなみに、得意科目と苦手科目は?」

「うーん…。勉強をちゃんとしてた頃は、数学は割と出来てて、歴史とかが弱かったかな」



暗記科目苦手だもん…。



日本史とか英語とか生物とか。



「くるみはそういうの、単語で覚えようとしてるだろ。そうじゃなくて理屈をまず知るんだよ」



奏が言った。