「……何であんた、嘘つきの臭いがしたのか、わかったわ」
 ため息のようにリシュナが囁く。
「あんた、自分に嘘をついていたのね。いいわよ、泣いて」
 シルフィスは片手を岩についた。その手に額を押しつける。
 固く閉じた目から涙が、喰いしばった歯の間から嗚咽があふれた。
 ずっと蓋してきた気持ち。母上、母上……マクリーン……。
 子どものように泣いてしまった。涙が、止まらない。
 ふと、何か柔らかいものが肩に触れた。頬の涙を拭って顔を横に向けると、栗色の髪が自分の肩を撫でている。
「……髪の毛って、動くんだ……」
 かすれた声で言った。
「根性、ってやつよ。できるようになるまで、百年かかったけどね」
 シルフィスは涙に濡れた目でリシュナを見上げた。強張った頬で微笑んだ。
「それじゃあ、できる人がいないわけだね。百年生きるのがまず難しいし、百年生きたら髪の毛さみしくなってしまうし」
「そうね」
 リシュナも笑う。
 岩から体を起こして、シルフィスは鼻をすすった。外套の袖で、しっかりと涙を拭いた。少しの間何もないところを見つめ、
「頼みがあるんだけど」
 と、リシュナに言う。
「このこと、ナーザには……」
「いいわよ、ナイショね」
 リシュナは、ぱちっ、と片目をつむった。