「馬鹿ね」
 リシュナは柔らかに言う。
「お母さんが死んだら、子どもは泣いていいのよ。誰も見てないところでこっそり泣いたっていいじゃない」
「だって……」
「あんた、お母さんが嫌いだったの?」
 かぶりを振った。
 大好きだった。大好きだ、母も……エディアも。
「泣いていいわよ?」
 リシュナの声が優しくて、鼻の奥がつんとする。だめだ、我慢できないかもしれない。
「聞いていいかな」
 声が喉にからんでかすれた。
「何?」
「僕は、マクリーンのためにも、泣いていいのかな」
「マクリーン……王家に仕えていた魔法使いのこと?」
「そう。魔法使いで、エディアと僕の教師だった。いろんなことを教えてもらった」
「どうして泣いちゃいけないの?」
「僕にそんな資格……ないんじゃないか、って……。僕の母の呪法をエディアの代わりに受けて、亡くなってしまったから……」
「あんた、その魔法使いのことも、好きだったのね」
 シルフィスは頷く。もう、顔を上げていられなかった。
 優しい師だった。母親の違いでエディアとシルフィスを区別することもなく、自分たちの疑問に根気よく付き合ってくれた。
 頼めば魔法も教えてくれた。全然、ものにならなかったけど。