「入れ」
部屋の中には、小柄な老人と屈強な男がテーブルをはさんで座っていた。
老人に見えるが、実際の年齢はよくわからない。頭髪のなくなった頭に布を巻き、丈の長い衣服をまとった姿は僧侶のようだ。
が、シルフィスに、にやり、と向けた笑みはまるで悪戯小僧だ。
『青鷺の宿』のマスター、クルカム。老人の部類なのは間違いないと思われるのだが、シルフィスはクルカムに素手の仕合で勝ったことがない。
クルカムの向かいに座る男は三十前後。よく焼けた肌と触りたくなるような筋肉の持ち主だ。ギルドに加わったのは割と最近。何か事情があって他国から流れてきたらしいが、それが何かは知らない。知ろうとも思わない。知っているのはハザンという呼び名と、彼には背中を預けても大丈夫だということだけ──一緒に仕事をするには、それで充分。
「お久しぶりです、マスター。やあ、ハザン。──今回は、どんなお仕事ですか?」
愛想良く挨拶しながら、シルフィスはハザンの隣に腰を下ろす。
が。
「王の夢見が、三晩続けて同じ夢を見たそうだ」
前置きなく老人が吐き出した言葉に、シルフィスは笑みを消した。
部屋の中には、小柄な老人と屈強な男がテーブルをはさんで座っていた。
老人に見えるが、実際の年齢はよくわからない。頭髪のなくなった頭に布を巻き、丈の長い衣服をまとった姿は僧侶のようだ。
が、シルフィスに、にやり、と向けた笑みはまるで悪戯小僧だ。
『青鷺の宿』のマスター、クルカム。老人の部類なのは間違いないと思われるのだが、シルフィスはクルカムに素手の仕合で勝ったことがない。
クルカムの向かいに座る男は三十前後。よく焼けた肌と触りたくなるような筋肉の持ち主だ。ギルドに加わったのは割と最近。何か事情があって他国から流れてきたらしいが、それが何かは知らない。知ろうとも思わない。知っているのはハザンという呼び名と、彼には背中を預けても大丈夫だということだけ──一緒に仕事をするには、それで充分。
「お久しぶりです、マスター。やあ、ハザン。──今回は、どんなお仕事ですか?」
愛想良く挨拶しながら、シルフィスはハザンの隣に腰を下ろす。
が。
「王の夢見が、三晩続けて同じ夢を見たそうだ」
前置きなく老人が吐き出した言葉に、シルフィスは笑みを消した。