「では、シルフィス、『黒白の書』が盗まれたとき、あなたは何故誰にも何も言わず、城を出たのですか? そんなことをしたら疑われるのは分かっていたでしょう?」
 シルフィスは自嘲気味に笑った。
「もともと信用されていませんでしたよ?」
 謀反人の子どもなど。
 ユーリーは首を左右に振った。
「聞き方が悪いのかな。つまり、あなたは、犯人でないのなら、『黒白の書』が盗まれたことに最初に気づいた人物ってことになりませんか? 書庫の扉が開いて『黒白の書』がなくなっていることが発見されたとき、あなたはすでに城から姿を消していた──噂ではそう聞いています。なぜ、『黒白の書』がないことをすぐに誰かに知らせなかったのでしょう。それとも、噂が間違ってるのかしら?」
 シルフィスは改めて彼女を見た。
 鋭いね、魔女さん。
 すぐには答えられなかった。が、全部話す、と持ちかけたのは自分だ。