全くの無表情でシルフィスは立っていた。
ディアナム・シ・グランガル。
他人の名のようだ。
「──だよね? さっき母さんが占ったとき、シルフィスのこと、『王位を失った放浪者』って、出たんだって」
シルフィスは、ナーザの肩から手を離した。
口を開くまで時間が要った。リシュナとルチェが驚いた顔を彼に向けている。ユーリーの表情は変わらない。
そうか、やはり、気軽に占いを頼む相手ではなかったということか。
「……わかっているなら話は早い、と言うべきなんだろうね」
ナーザに背を向けて二、三歩距離を取り、シルフィスはそう言った。僕の本当の名はディアナム・シ・グランガル──話はそこから始まるのだから。
「四年前、城を出てから、僕はギルドで働いている。『黒白の書』を探すためだ」
そして、王の夢見の話をする。そこにいるみなに聞かせるために。正確に、詳しく。
「失礼ですけど、ディアナム王子……」
言いかけたユーリーに向かって、シルフィスは唇に笑みを刷いた。
「すみません、シルフィスと呼んでください。その名は捨てたので」
ユーリーは、こくん、と頷く。そう言われるのがわかっていたように。
ディアナム・シ・グランガル。
他人の名のようだ。
「──だよね? さっき母さんが占ったとき、シルフィスのこと、『王位を失った放浪者』って、出たんだって」
シルフィスは、ナーザの肩から手を離した。
口を開くまで時間が要った。リシュナとルチェが驚いた顔を彼に向けている。ユーリーの表情は変わらない。
そうか、やはり、気軽に占いを頼む相手ではなかったということか。
「……わかっているなら話は早い、と言うべきなんだろうね」
ナーザに背を向けて二、三歩距離を取り、シルフィスはそう言った。僕の本当の名はディアナム・シ・グランガル──話はそこから始まるのだから。
「四年前、城を出てから、僕はギルドで働いている。『黒白の書』を探すためだ」
そして、王の夢見の話をする。そこにいるみなに聞かせるために。正確に、詳しく。
「失礼ですけど、ディアナム王子……」
言いかけたユーリーに向かって、シルフィスは唇に笑みを刷いた。
「すみません、シルフィスと呼んでください。その名は捨てたので」
ユーリーは、こくん、と頷く。そう言われるのがわかっていたように。