何が書いてあるんだ──そう思ったシルフィスの心を読んだように、ナーザが低く言った。
「レイシアの丘のふもとの村で、墓が荒らされ、死体が盗まれている──って噂を、兄さんが酒場の女に聞いたって。その女も別の客からの又聞きらしいけど。──盗まれた死体が、レイシアの丘を徘徊してるのを、見た者がいるとかいないとか」
「それは……」
「作り話の怪談でなきゃ、ホルドトの魔法だ」
言い切るナーザ。
シルフィスは、ごく、と唾を飲む。ホルドトの魔法──それは『黒白の書』に記された魔法ということか。
「ナーザ」
シルフィスはいきなりナーザの肩を両手でつかみ、真正面に向かい合った。
「君の知ってることを全部教えてくれ。僕の知ってることもすべて話す」
「俺もそう思っていた」
落ちた前髪を、軽く頭を振って払い、金茶の目がきっぱりと彼を見上げた。
「全部教えてほしい。ディアナム・シ・グランガル……王子」
「レイシアの丘のふもとの村で、墓が荒らされ、死体が盗まれている──って噂を、兄さんが酒場の女に聞いたって。その女も別の客からの又聞きらしいけど。──盗まれた死体が、レイシアの丘を徘徊してるのを、見た者がいるとかいないとか」
「それは……」
「作り話の怪談でなきゃ、ホルドトの魔法だ」
言い切るナーザ。
シルフィスは、ごく、と唾を飲む。ホルドトの魔法──それは『黒白の書』に記された魔法ということか。
「ナーザ」
シルフィスはいきなりナーザの肩を両手でつかみ、真正面に向かい合った。
「君の知ってることを全部教えてくれ。僕の知ってることもすべて話す」
「俺もそう思っていた」
落ちた前髪を、軽く頭を振って払い、金茶の目がきっぱりと彼を見上げた。
「全部教えてほしい。ディアナム・シ・グランガル……王子」