ユーリーは机の上にカードを取り出していた。
 古いカードを繰る老いた長い指が脳裏に浮かんで、シルフィスの心が懐かしく痛む。
「何を占いましょうか」
 シルフィスは少し考えた。『黒白の書』の行方は占えなかった、とナーザは言っていた。では。
「漠然としていても構いませんか。例えば、探し物が見つかるか」
「いいですよ。答えも漠然としてしまうかもしれないけど」
「見ててもいい?」
 ナーザが尋ねた。シルフィスは、どうぞ、と微笑した。探し物が見つかるか見つからないか、それだけの答えなら、聞かれても何の不都合もない。
 シルフィスの答えを聞いて、ルチェもテーブルのそばに来た。リシュナを胸に抱いている。
「カードを崩していただけますか?」
 言われるままにシルフィスは裏向きに置かれたカードの山を崩した。そして、崩したカードを軽くかきまぜる。
 いちばんよく使われる手順だ。占者は再びカードを集め、決められた回数シャッフルし、決められた枚数を上から数えてテーブルに表にする。
 けれど、ユーリーはカードを集めなかった。静かに崩されたカードを見つめている。
 まさか、と思った。彼女は己の直感でカードを選ぶのか?
 カードを切り、並べることは誰にでもできる。だが、カードのあらわす意味は多様で抽象的だ。並んだカードからどんな啓示を読み取るかは、占う者の直感による。言いかえれば、カードは占者の直感に指針を与える道具に過ぎないが……。