「四年前にさ」
 と、ナーザは話を続ける。
「『黒白の書』が盗まれたって話がエラルドにも伝わったとき、母さんが行方を占ったことがあるんだ」
 母さん──というと、マクリーンに占いを伝授されたユーリーという女性か。
「何か分かったか」
 思わず喰いついてしまったのだが、ナーザはあっさりと首を振る。
「ううん。魔法で追跡できないように、何かの術式をかけてあるみたいだ──って、母さんは言ってた」
 ああ、そうだ──シルフィスは軽く脱力する。
 そう、魔法で見つけられるものなら、とっくに見つかっているはずなのだ。王家に仕える大魔法使いのマクリーンは亡くなったが、王宮には他にも力のある魔法使いが何人もいた。その中には、マクリーンの直弟子もいる。自他ともに天才と認めるほどの。
 『黒白の書』が夢見の夢に引っ掛かったのは、もの凄い幸運だったのだろう。夢見たちの能力がひたすら受け身なために、術式の妨害を受けなかったのかもしれない。