「ねえ、実はここへ来る前、サーカスの虎が逃げたという話を聞いたんだけど」
え、と少年は笑みを消す。
「僕は見ての通り吟遊詩人で、お客様に、旅の途中で見聞きした珍しい話や冒険譚をせがまれることがよくあるんだよ。虎を退治した戦士がここにいると聞いたものだから、直接話を聞けたらなあ、と思ったんだけど」
少年は無言でシルフィスの話を聞いている。
「会えるかな、その、雷帝、と呼ばれるメンバーに」
尋ねると、少年は下を向いた。その反応に、シルフィスは、ありゃ、と思う。何か、気づかないうちに、彼の気に障るようなことを口にしてしまったか?
黙ったまま、少年はシルフィスのテーブルへと引き返してきた。向かい側の椅子を乱暴に引き、腰を下ろす。
ずっとうつむいていた顔をパッと上げた。
「いいよ。何でも聞いて?」
嬉しさを堪えきれないような笑顔だった。
「え?」
と、シルフィスは聞き返す。聞くって──誰に、何を。
「だから、俺。その、雷帝」
少年は、どこまでも嬉しそうに、自分の笑顔を指差した。
え、と少年は笑みを消す。
「僕は見ての通り吟遊詩人で、お客様に、旅の途中で見聞きした珍しい話や冒険譚をせがまれることがよくあるんだよ。虎を退治した戦士がここにいると聞いたものだから、直接話を聞けたらなあ、と思ったんだけど」
少年は無言でシルフィスの話を聞いている。
「会えるかな、その、雷帝、と呼ばれるメンバーに」
尋ねると、少年は下を向いた。その反応に、シルフィスは、ありゃ、と思う。何か、気づかないうちに、彼の気に障るようなことを口にしてしまったか?
黙ったまま、少年はシルフィスのテーブルへと引き返してきた。向かい側の椅子を乱暴に引き、腰を下ろす。
ずっとうつむいていた顔をパッと上げた。
「いいよ。何でも聞いて?」
嬉しさを堪えきれないような笑顔だった。
「え?」
と、シルフィスは聞き返す。聞くって──誰に、何を。
「だから、俺。その、雷帝」
少年は、どこまでも嬉しそうに、自分の笑顔を指差した。