「お待たせ」
 すぐ、少年が茶と焼き菓子を運んできた。
 明るい場所で改めて見ると、なかなかの美少年だった。
 十五歳ぐらいかな、とシルフィスは見当をつける。美少年なのだが、にししっ、とか笑いそうな雰囲気がある。
 金茶の瞳は差し込む日差しに明るく透け、テーブルに皿を置くために伸ばした腕は陽に焼けて滑らかに引き締まり、とても健康そうだ。
 茶を一口飲んで、シルフィスは顔を上げた。
「おいしいね」
 世辞ではない。いや、まずくても会話の糸口にそう言うつもりだったが、本当にうまい。
 カウンターに戻りかけていた少年がふり向く。
「わかる? サンディーナのお茶だよ。一週間前に、港に船が入ってさ」
 サンディーナといえば、王宮にも茶葉を献上している有名な産地だ。
「そんなに大きな港じゃないんだけど、場所がいいんだってさ。いろんな船が一休みに寄ってくよ」
 少年は笑った。
 やっぱり、にしし、だった。
 予想が当たったのがおかしかったのか、少年の屈託ない笑顔につられたのか、シルフィスも笑っていた。
 ここへ案内してくれた子どもの言っていた『電気クラゲ』とは、この少年のことだろう。メンバーは三人という話だったが……。