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 藍色の空に半月が浮かんでいる。
 シルフィスが儀式の場所に選んだのは、港から少し離れた入り江の砂浜だった。
 夜の海辺には、彼ら三人の他に、誰もいない。
 海鳴りだけが聞こえる。
 柔らかな砂の上に、シルフィスは杖で魔法陣を描いた。その中央に、ナーザがリシュナをそっと置く。
 月に照らされたナーザの顔は少し青かった。月の光の加減かもしれない。それでも、ナーザがひどく緊張しているのは間違いなかった。儀式の時刻が近づくにつれ、ナーザは無口になっていた。
 もしかしたら、ナーザは儀式の結末を承知しているのではないか──シルフィスがふとそう感じるほどに。
 ……それならその方がいいかもしれない、と、シルフィスは密かに思っていた。