ハルベルティはシルフィスに背を向け、棚からひとつの小瓶を取った。シルフィスが薬を飲みほしたコップの横に、それを置いた。一枚の紙片と一緒に。
「おまえが眠っている間につくった。ここに描いた解呪の魔法陣の中でこの瓶の中身を飲めば、呪いは解ける。簡単だろ?」
そうして、赤い髪に片手を突っ込んだ。やり切れないように言葉を吐き出した。
「おまえ、それを持っていって、あの女に話せ。知り合いの方が、うまく話せるんじゃねえかな?」
小瓶の中はきらきらと光る液体だった。とても綺麗な……。
「僕がやるよ」
シルフィスが瓶を見つめたままそう言うと、ハルベルティのほっとした気配が伝わった。
「──じゃあ、俺は行くからな」
口調がガラリともとの尊大なものに変わる。
「出血は派手だったが、骨も腱も無事だ。しばらくふらつくだろうが、喰って休めばそのうち治る。──傷は残るぞ」
「わかった。ありがとう」
「聞こえねえよ」
また来る、と言い置いてハルベルティは出て行ったが、無論、もう一度会うつもりはなかった。ハルもそれをわかっていて解呪の薬を置いていったのだろう。
そろそろとベッドを降りた。
床に足をつけてまっすぐ立った途端、目の前が暗くなって吐き気がした。ベッドに腰を落としてやり過ごし、もう一度、慎重に、立ち上がる。
出発を先延ばしにするつもりはなかった。ディアナムが目を覚ました、というハルベルティの報告を受けたエディアがここに来る前に、姿を消す。
ベッドのそばの壁に杖がたてかけられていた。
ハルが? ──ちらっ、と思ったが、考えないことにした。
杖を頼りに歩き出す。
まずは、いつも怪我をしたときに世話になる医者のところへ転がりこもう。そして、それから──。
「おまえが眠っている間につくった。ここに描いた解呪の魔法陣の中でこの瓶の中身を飲めば、呪いは解ける。簡単だろ?」
そうして、赤い髪に片手を突っ込んだ。やり切れないように言葉を吐き出した。
「おまえ、それを持っていって、あの女に話せ。知り合いの方が、うまく話せるんじゃねえかな?」
小瓶の中はきらきらと光る液体だった。とても綺麗な……。
「僕がやるよ」
シルフィスが瓶を見つめたままそう言うと、ハルベルティのほっとした気配が伝わった。
「──じゃあ、俺は行くからな」
口調がガラリともとの尊大なものに変わる。
「出血は派手だったが、骨も腱も無事だ。しばらくふらつくだろうが、喰って休めばそのうち治る。──傷は残るぞ」
「わかった。ありがとう」
「聞こえねえよ」
また来る、と言い置いてハルベルティは出て行ったが、無論、もう一度会うつもりはなかった。ハルもそれをわかっていて解呪の薬を置いていったのだろう。
そろそろとベッドを降りた。
床に足をつけてまっすぐ立った途端、目の前が暗くなって吐き気がした。ベッドに腰を落としてやり過ごし、もう一度、慎重に、立ち上がる。
出発を先延ばしにするつもりはなかった。ディアナムが目を覚ました、というハルベルティの報告を受けたエディアがここに来る前に、姿を消す。
ベッドのそばの壁に杖がたてかけられていた。
ハルが? ──ちらっ、と思ったが、考えないことにした。
杖を頼りに歩き出す。
まずは、いつも怪我をしたときに世話になる医者のところへ転がりこもう。そして、それから──。