不意に、あることが思い浮かんだ。
「リシュナの呪いのことなんだけど……」
 ああ──と、ハルベルティもシルフィスに視線を戻す。
「飛頭の呪い、な。エディアが褒美の話をしたら、あの雷撃の小僧、賞金は要らないから女の呪いを解いてほしい、って言ってな」
「解けるのか」
「『黒白の書』が戻ったからな。俺も中を見るのは初めてだったが、呪いのかけ方がわかりゃあ、解くのは、まあ……」
 胸が軽やかに弾んだ。
「解けるんだな?」
 が、頷いた魔法使いの顔は浮かないものだった。
「解ける。そんなに難しくもねえ。けどな……」
 天井を仰向いて、腕を組む。
「二百年前にかけられた呪いってのが、問題なんだ」
 尋ねるように、シルフィスはハルの顔を見た。ハルベルティは小さく息をつく。
「二、三十年なら、何とかなったんだろうけどな。二百年は、長え」
 そう言われて、シルフィスはハッとする。
 視線を落とした。