「ま、おまえ、今回はよくやったんじゃねえの? ヘタレ王子にしては」
 カチン、ときた。
 四年ぶりに。
「君にだけは言われたくないな、ハルベルティ」
 にこり、と微笑んで、言い返す。
「君、僕と勝負して一度も勝ったこと、なかったよね?」
 ガラス棒を持つハルベルティの手が止まる。白い頬に朱がさした。
「……反則なんだよっ、おまえは。魔法が効かないとか」
「へえ。剣の仕合いに魔法を使うのは反則じゃないんだ?」
「ああ? 魔法使いが魔法を使って何が悪い。つーか、てめっ、他に言うことがあるだろーが。そのキズ、誰が手当てしてやったと思ってんだ」
 ガラス棒の先端がシルフィスを向いた。
「大変だったんだぞ? おまえ、治癒魔法も効かねえから。止血して、体を拭いて……」
「体を拭いた……? 君が? 僕の?」
「薬を塗って包帯を巻いて……露骨に嫌な顔してんじゃねえ! 俺だってもの凄く嫌だったんだよ! けど、エディアがおまえを一生懸命に介抱するところなんて、死んでも見たくなかったんだから俺がやるしかねえだろっ!」
 ハルベルティは乱暴に水差しをつかんだ。何種類かの小瓶の中身を混ぜたコップに水を注いだ。
 立ち上がり、そのコップをベッドの枕元にある小さな台に置く。