どうしました? ──そう尋ねたのは、プラチナの髪の魔法使いだった。
 皺深い顔が優しく笑んでいる。
 王宮の庭園の片隅に設えられた魔法使いの住まいは、魔法使い自身の希望で庭師の小屋のように質素だったが、風に揺れるハーブに囲まれたその住まいは、彼にとってとても居心地の良い場所だった。
 彼はそこでエディアとともに、一日のうち数時間を、魔法使いにいろんなことを学んで過ごすのだ。明るい日差しの差す窓際に置かれたテーブルに、古い書物を広げて。
 その日、エディアはまだ姿を見せていなかった。椅子の上でもじもじしていた彼は、魔法使いの微笑みに励まされる気持ちで、口を開いた。
 ──どうしたらいいか、わからないことがあるんです。
 ──どんなことでしょう。
 彼はそこでまた迷う。言っていいのかな、と。
 魔法使いは静かに彼の言葉を待っている。彼は思い切って口を開いた。
 ───僕はエディアのことを姫君と呼ぶべきだ、と言う者たちがいるんです。
 ああ、と魔法使いは微笑みを深くする。
 ───エディア様も、そう言われるのですか?
 彼は驚いて、いいえ、と首を振った。
 ───エディアはそんなことは言いません。姫君、と呼んだら、姉弟なのだからエディアと呼べ、と叱られました。でも、いいんでしょうか? 僕は……。
 ───ディアナム様は、何と呼びたいのですか?
 ───僕は、
 言いかけて、ためらう。小さな声で、続けた。
 ───エディア、です……。