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 窪地での、王軍と死体の群れとの戦いは、ほどなく決着した。
 ナーザは魔法使いとともに、昇る太陽を背にした王軍が死体兵を圧倒するのを、丘の上から見守った。朝日の下で崩れかけた雷帝にも、もはや雷を呼ぶ力はなかった。
 すべてを土に返したあと、王は魔法使いのところに従者も連れずに馬を走らせてきた。
「よくやった、ハル」
 頬を上気させて声をかける王に、魔法使いは首を振る。
「いや、闇を払ったのは俺じゃねえ」
「おまえでなければ、誰が」
 不思議そうに尋ねた王に、ナーザは申し出る。ギルドの戦士が、『黒白の書』を持った魔法使いと戦っていたのだ。彼がきっと魔法使いを倒したのだ───と。
 『黒白の書』───王と魔法使いの顔色が変わる。
「どこだ。場所はわかるか。今すぐ案内してくれ」
 言われなくてもそのつもりだ。
 ナーザは王と魔法使いとともに、雷帝の城跡に向かった。ナーザは魔法使いの馬にふたり乗りさせてもらって。