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 ナーザは痛みも疲れも忘れて体を起こし、目を大きく開いて空を見上げていた。
 城跡から伸びた白い光芒は、槍のように鋭く黒い雲を貫いていた。貫かれた個所から、すべての方向へ眩い光が細く走って、空の闇がひび割れる。
「……解呪?」
 光を見上げた魔法使いが、口走るように呟いた。
 シルフィスだ、とナーザは心の中で快哉を叫んだ。シルフィスがやったんだ。伯父だという魔法使いを倒して。
 一拍の間のあと。
 ガラスが割れるように闇が砕けた。輝く光が力強く雲を圧して差し込んだ。闇は破片となって落ちる途中で透き通り、光の中で消え失せる。
 丘の上に太陽が昇っていた。目眩のするような青空が広がった。
 太陽の光に晒されて、窪地のあちこちで死体兵の体が崩れていく。
 雷帝はゆっくりと空を見上げていた。太陽の光を遮ろうとするように残った腕を目の上にかざした。
 その腕も、ぼろり、と地に落ちる──。
 そして、王の率いる軍勢が、きらめく陽光を浴びて窪地の縁に姿を現していた。