「傍若無人なやつですまんな」
赤い髪の魔法使いから目を離せないでいるナーザに、王が言った。
「マクリーンの弟子で、彼の跡を継いで王家に仕える魔法使い、ハルベルティだ」
「誰が王家に仕えてるって? 俺はおまえに仕えてんだよ」
ふり向かずに、男が口をはさみ、王は片方の肩をすくめた。ナーザにだけ、小声で囁く。
「ああいうやつだ。だが、力はある」
そうだろう、とナーザは心の中で相槌をうった。
徐々に落ち着いてきた。自分がこうして生まれ変わっているんだから、彼が生まれ変わっているのだって、アリ、なんだ。
赤い髪の───かつて雷帝とともに国民に辛酸を舐めさせた希代の魔法使い、ホルドト。
ナーザの視線の先で、赤い髪の魔法使いの指先が宙を滑った。
光る文字が生まれていく。文字は流れて魔法使いの頭上に大きな円をかたちづくる。
まるで苦痛をこらえるような魔法使いの真剣な顔。
さらに大きな文字列の円が最初の円を囲む。そしてもうひとつ。不意に円は解れ、光る文字のリボンとなって空に昇っていく。
光の魔法だ。
ふと戦局を忘れ、ナーザは不思議な感慨に捉われる。自分の前に立つのは、光の魔法を使い、王家に仕える魔法使い。
ぶちり、とその光る文字のリボンが切れた。風に吹き消されるように文字が光を失い、つぎつぎと闇に融けた。
「ちっ」
魔法使いはもう一度指を空に向ける。
同じことが繰り返された。生み出される光の文字。だが、空に昇る途中で、消え失せる。
王は表情を変えず、腕を組んでそれを見ていた。
赤い髪の魔法使いから目を離せないでいるナーザに、王が言った。
「マクリーンの弟子で、彼の跡を継いで王家に仕える魔法使い、ハルベルティだ」
「誰が王家に仕えてるって? 俺はおまえに仕えてんだよ」
ふり向かずに、男が口をはさみ、王は片方の肩をすくめた。ナーザにだけ、小声で囁く。
「ああいうやつだ。だが、力はある」
そうだろう、とナーザは心の中で相槌をうった。
徐々に落ち着いてきた。自分がこうして生まれ変わっているんだから、彼が生まれ変わっているのだって、アリ、なんだ。
赤い髪の───かつて雷帝とともに国民に辛酸を舐めさせた希代の魔法使い、ホルドト。
ナーザの視線の先で、赤い髪の魔法使いの指先が宙を滑った。
光る文字が生まれていく。文字は流れて魔法使いの頭上に大きな円をかたちづくる。
まるで苦痛をこらえるような魔法使いの真剣な顔。
さらに大きな文字列の円が最初の円を囲む。そしてもうひとつ。不意に円は解れ、光る文字のリボンとなって空に昇っていく。
光の魔法だ。
ふと戦局を忘れ、ナーザは不思議な感慨に捉われる。自分の前に立つのは、光の魔法を使い、王家に仕える魔法使い。
ぶちり、とその光る文字のリボンが切れた。風に吹き消されるように文字が光を失い、つぎつぎと闇に融けた。
「ちっ」
魔法使いはもう一度指を空に向ける。
同じことが繰り返された。生み出される光の文字。だが、空に昇る途中で、消え失せる。
王は表情を変えず、腕を組んでそれを見ていた。