ナーザは地面に膝も両手もついていた。
 目は閉じている。
 ひたすら雷光の閃く瞬間を感じ、それを自分の支配下に捉えようとしていた。己の思念に異物のように入りこむ雷帝の力を、かわし、押し戻し、押し戻され──。
 するり、と、何かが自分の中で滑り落ちたような感覚があった。力が、抜けた。
 持って行かれた、支配権を。
 すぐそばで凄まじい音が鳴った。ナーザは閉じていた目を開けて、音のした方を見る。離れた場所、だがこれまでの落雷よりはすっと近い場所で、わずかに生えた草が黒く焦げ小さな炎を上げていた。
 もう駄目かもしれない、と思った。
 それでも、散じた気をもう一度集中させようとした。
 来る、と予感する。が、感じた途端、その閃光は奪われていた。
 家族とリシュナの顔が浮かんだ。
 ごめん、という言葉と。
 光が降る。