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 死体が蠢く窪地から少し離れた丘に黒い影があって、死体の群れと異常な落雷を見下ろしていた。
 影は四つ。馬に乗った四人の男───いや、ひとりは女。
「……あれが雷帝の力、か……?」
 漆黒の髪を背中で無造作に束ねた女が傍らの男に尋ねる。男は、茶、というより赤に近い髪をかき上げて灰色の目を細めた。
「雷帝と……誰かが戦っているな」
 ふたりとも、若い。二十歳前後だ。女は、革の胴当てを着けただけの雑兵まがいの軽装だが、清冽な、美しい顔立ちをしている。男は魔法使いの黒衣に身を包み、一見細身の優男だが目つきは鋭い。
 あとのふたりは従者の風情でふたりの後ろに控えている。
 次々に地面に落ちる雷に、しばらく目を細めたあと、男が低く口笛を鳴らした。
「信じらんねえ。雷撃の異能のぶつけ合いだ。甦った雷帝と……もうひとりはおまえが雇ったギルドの戦士か?」
「知らん。依頼はしたが、人選はあちらに任せた」
 そう言った女を軽く見て、男は指先で宙に大きく円を描いた。描いた円が薄ぼんやりと光を帯び、金髪の少年を映しだした。
「子どもじゃないか」
 女が驚いた声を上げる。男も唸った。
「子どもだな」
「この子どもが雷帝と戦っているというのか?」
「ああ。ひとりで、な」
 女のかたち良い唇が真一文字に結ばれた。閃光が次々と地に刺さる窪地に、黒曜石のように輝く黒い瞳をきっと転じる。
「あの子どもを救うぞ」
 そう言ったときには、馬の腹に強く拍車を入れていて。
「ハル、援護しろ」
「おいっ……」
 待て、の言葉を飲み込んで、男は舌打ちした。すぐさま馬を転じて女を追い、従者ふたりもあわてて後に続く。
「エディア様!」
 と、その名を叫んで。

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