ネイロフは首を捩じってシルフィスを見上げた。
「裏切り者め。城でメイジェイルとおまえが受けた仕打ちを忘れたか」
「みなは僕たちを見下したわけじゃない。誰が見てもエディアは王に相応しかった。彼らがどうなのかじゃなく、僕たちがどうあるのかが問題だったんだ」
 優しい者たちもいた。たとえば、マクリーンのように。軍の師範たちも自分を可愛がってくれた。魔法の才能はないのに、なぜか武術の才はあって、教え甲斐がある、と。
「伯父上、申し訳ないが、昔話の時間はない。雲を払っていただきたい」
 もう一度要求を繰り返す。
 ネイロフは、ただ、笑った。嘲るように。
 シルフィスはネイロフの腕を背中に捩じり上げ、力を加える。声を低めた。
「ギルド戦士なんて、聞こえはいいですけど、内実は綺麗な仕事ばかりじゃなくて。僕はあなたの手指を一本ずつ折るくらい、しますよ」
 脅しても、ネイロフの笑みはそのままだった。
 が、不意にその顔がひきつる。白目を剝き、唇が苦痛に歪んだ。
 毒か、とシルフィスは気づいた。歯に仕込んでいたか。