「うむ。そこで三晩目の夢なんだが」
 クルカムは細い腕を組んだ。眉間にしわが寄る。
「夢見ふたりの夢が分かれた」
 シルフィスはハザンと顔を見合わせた。
 ふたりのメンバーが呼ばれたのは、組め、ということだと思っていたのだが。
「ひとりは、荒涼たる丘に建つ崩れた城を見た。丘を離れれば、手入れされた葡萄畑が広がっているのに、その丘だけが取り残されたように荒れたままなのだそうだ。学者たちは、そこは雷帝が勇者に倒された地──レイシアだろう、と推測した」
 シルフィスはそっと頬を撫でた。雷帝終焉の地──彼の者が復活するには、至極ふさわしい場所だ。
「もうひとりの夢見は、にぎわいのある町の夢を見た」
 天井を見上げ、クルカムは軽く息をつく。
「こちらはどこの町か確定するのに苦労したそうだ。大きくもないが、小さくもない町。広場があって、港があって──そんな町、海沿いにいくらでもある。夢見が、広場の鐘楼に笛吹き少年の風見がついていたと思い出して、何とか結着した。笛吹き少年をシンボルにしている町はみっつ、港があるなら、おそらくエルラド」