男たちが自分たちの方へと体の向きを変えていた。リシュナと言い争っているヒマはなかった。
 ならば、いっそ。
「じゃあ、あの目玉を僕の方へ追い込んでくれ。できる?」
「いいわよ」
「気をつけて、リシュナ」
 ナーザが叫ぶと同時に、リシュナは宙を滑った。突進してくる男たちの頭上を越えて、目玉に近づく。
 向かってくる男たちの先頭は四人。シルフィスは手裏剣を投げ打った。中央のふたりが喉を貫かれて倒れた。そこを目がけてシルフィスは突っ込む。
 二列目の戦士の剣を杖で受けた。受けて流し、体を入れ替えて後方のナーザを視界に入れた。
 先頭の四人のうち手裏剣で仕留められなかった左右の戦士は、シルフィスの横を走り過ぎてナーザへと斬りかかっていた。
 ナーザは片手を軽く壁について低い姿勢をとったまま動かない。
 が、剣を振り上げた男たちは、突然青白い光に包まれて後ろへと弾け飛んだ。──激しい音と火花放電とともに。
 球面を成して少年を取り巻く電気の膜が、一瞬、うっすらと光って見えた。
 仰向けに倒れた戦士らの体は黒く焦げて動かない。
 ナーザを心配する必要は何もなかった──心配している余裕もなかった。