「ふたりとも?」
 無意識に声を潜めていた。ふたり? ──と聞き咎めたハザンには、
「王には双子の夢見が仕えていてね、ふたりそろって同じ夢を見たとき、それはほとんど現実になるそうだよ」
 簡単に説明し、マスター・クルカムに目を戻す。
 クルカムはシルフィスの質問に頷いた。
「ふたり、だ」
「どんな夢を?」
「雷帝が復活する」
 シルフィスは眉を寄せた。
 ──雷帝。その名は知っている。知ってはいるが……。
「雷帝、というと、俺の知識では、グランガル王国の伝説の暴君しか思いつかんが」
 自信無げにそう言ったのはハザンで、シルフィスも、ああ、と同意の声を上げる。
 雷帝──二百年ほど昔、グランガルを支配した王がそう呼ばれた。酷く残忍な王で、国民を虐げ、雷を操る異能を持ち、国中を恐怖で満たしたが、最後は蜂起した領民に殺されたとか。
 で、そのとき領民を率いて戦った勇者が、現グランガル国王のご先祖様なのである──なんて話になるのだが。