その日は、まだ7月の目前だと言うのに真夏日のような太陽がコンクリートをヂリヂリと照らしつけていた。


お洒落なカフェやレストラン、ピザの配達すらもない、高齢化がただじわじわと静かに進んでいる、典型的な田舎である神杜市にはなんの取り柄もない。


"魅力"と無理矢理言うのであれば、この地域で"神杜怪事件調査団"と言う胡散臭い団体で活動している、私立海宝学園の高校2年生の生徒4名にとって、神杜の外れにある竹林の中の神杜公園は唯一と言える、この市の重要な"魅力"なのだろう。


この神杜では先ほども言ったように高齢化が進んでいる。


ただえさえ少ない子持ち家族は、わざわざ市の隅の方にある怪しげな竹林の中の公園に遊びに来らわけもなく、今ではまだ新しい隣町の公園に遊びに行くのが主流となっている。


そのため、神杜市唯一の公園である神杜公園は廃れてしまった。


しかし不思議なもので、廃れてはいても空気はいつも澄んでいるのだ。


きっとこの神杜公園を覆い隠すように天まで伸びている竹林のおかげだろう。


今日もこの竹林のおかげである新鮮な空気を吸って、神杜怪事件調査団は活動を始めようとしていた。


彼らが住み、通う高校のある海月町は神杜市から電車で約20分。


遠くはないが、特段近いというわけでもないこの市の公園まで彼らが来るのには理由がある。


彼らというのは、ここでは勿論"神杜怪事件調査団"のメンバー達で、海月町に住む高校生4人組の事である。


1人ずつメンバー紹介でもするとしよう。


まず、この怪しげな団を率いるのは4人の中で誰よりもやる気と活気に満ちた女子高生・宮城新(みやぎ あらた)である。


ちなみにこのチームに胡散臭い名前をつけたのも新で、決して他のメンバーが「新をリーダーに」と積極的に勧めたわけではなく、自らリーダーを務めると主張をしたのだ。


そもそも他のメンバーはただ4人でいるだけで良いと思っていたのに、新が勝手に暴走し、この関係に"神杜怪事件調査団"などと言うとてつもなくダサい名前をつけたのだった。


続いてこの自称リーダーを支える副リーダーのような立ち位置についているのはどんな時も落ち着いているクールな男子高校生・築島悠宇(つきしま ゆう)。


他の誰が見ても、どんな時でもどんな場合でも冷静沈着に対応して解決する彼こそがリーダーに相応しいと思うだろう。


しかし、悠宇はそもそも望んでこの胡散臭いチームに入ったわけでもないのに、リーダーを務めるのは彼にとっては決してあってはならないことである。