そんな中、「裁判官殿、宜しいですか?」と、弥勒様が手を挙げる。
裁判官の許可を得ると、弥勒様は私の方を一瞥した後、手元にある羊紙に目を落としながら話を始めた。
「……実は、今回の件に関して。被毒の被害者である伽藍姫本人から、申し立て人、被告人はじめ、法院裁判官殿、傍聴観衆の皆様への伝言を預かっております」
その一言に、ザワッと城内が沸く。
私も驚いて目を見開いてしまった。
伽藍様からの伝言?竜樹様、そんなこと一言も!と、思って、訴えかけるように竜樹様の方を見る。
私と目が合うなり、にんまりと笑う竜樹様。……伽藍様からの伝言、知ってたの?!
そんな中、弥勒様は淡々とその伝言を読み上げる。
まず、冒頭の挨拶から、自分が被害者となったこの事件で世を騒がせてしまったことへの謝罪の形式的な文章が読み上げられた。
……そして、後援ともいえる証言は、次だった。
「……『私が毒に侵された原因は、腰に僅かに刻まれ、消え掛かっている術陣のせいだとお聞きしました。神殿の治癒師様が仰ることは恐らく間違いないのでしょう。なのに、私に誠心誠意仕えてくれた侍女に在らぬ疑惑がかけられてしまったことは、非常に不本意なことです』」