観衆がザワザワとする中、私は自分の震える両手を強く握った。

代弁ではあるが、とうとう公の場で断言したのだ。その真相を。……私が冤罪であるという証拠を。

耳にして、全身に一層の緊張が走る。

ザワザワする観衆に向かって、「静粛に!」と法院裁判官の声が響く。

そして、その法院裁判官は、私の方を向いた。



「……では、鳩槃茶の舞空殿。其方に今一度聞こう。弥勒殿の今の証言に、異論はあるか?」



裁判官殿と視線が合って、全身がカチカチになりそう。

けれども、与えられたこの場を、機会を逃してはいけない。

自分自身のために。



渇いた喉から、声を押し出す。



「……い、異論はありません。その通りで御座います。……わ、私はやってません。伽藍様に、毒を盛ってはおりません!」



私の発言に、観衆が一層ザワザワする。

そんな中、罵声が飛んできた。

「……舞空!何の言い逃れを!父上が間違ってるとでも!」

「貴殿に発言権は与えられてませんよ!静粛に!」

朝霧様が例の如く私に向かって吠えていたが、即、裁判官に諌められて、「ぐぅぅ……」と、悔しそうに口を噤んでいた。