「守られるだけの存在ではなく、一緒に守るべきものを背負える人に私はなりたのです。」
鉄平がいない間に私なりに精一杯この時代のことを学んだつもりだ。

「すっかり元の咲に戻ったな。戦場へ行く前、池に落ちたあとの咲はどこかぎこちなかったのに、今はすっかり元の咲だ。」
もう一度私の体を抱き寄せた鉄平。

強く強く抱きしめられながら、私は私が知らないこの世界の”咲”を想っていた。
いつか、”咲”に戻って、私は”咲菜”に戻るのだろうか。



その日、鉄平は私と一緒に同じ寝台で横になり、ぐっすりと眠った。

目が覚めた時も、まだ眠っている鉄平。
幼いころから訓練を受けて来たとしても、長引いた戦い中は眠ることもままならなかったのだろう。

私は鉄平を起こさないように気をつけながら、寝顔を見つめ続けた。