「この手で、いくつもの命を奪ってでも守るべきものがある。」
鉄平はふと自分の手を見つめた。

その手はいつになく傷だらけで、何度もつぶれてはできてを繰り返したまめの皮がむけていた。

この手で刀を握って、戦い抜いてきたのだろう。

私はその手に自分の手を重ねた。

ギュッと握る。

「この手が私は好きです。この世の悲しみも苦しみも、幸福も、未来も、この手には握られている。この手が好きです。」
ガサガサの手をさすると、鉄平は私の体を抱き寄せた。

「そなたがいるから私は生きられる。心を強く保てる。前に進める。私にとっては、そなたがすべてだ。咲。」
「私に背負えるものは分けてください。私にも背負わせてください。」
鉄平は私の目を見て、驚いたように目を見開いた。