「平気か?」
少しして、私の身支度ができたタイミングで部屋に鉄平が来てくれた。

ひげをそり、髪も整えられている鉄平。

でもこけている頬や、目の下に濃くなっているクマが疲れを物語っている。

「平気です。」
せめて少しでも心配をかけないようにと、無理に微笑みを作ろうとした私に、鉄平は切なく微笑み、私の頬に触れた。

「無理しなくていい。今は悲しみに浸ることが菊姫の供養でもある。」
「・・・はい・・・」
誰もいない空間。
私は鉄平の胸に再び抱き着いた。

「ご無事に戻られてほっとしました。」
「ここに戻るために、頑張れたんだ。いつも咲を想っていた。」
鉄平は私の背中に手をまわしながら大きな体を丸め、包み込むように抱きしめてくれる。