「今にも倒れそうなお顔ですよ。」
富さんがそう言いながら、私の背中を温かなお湯で流してくれる。
「冷え切って。」
「・・・」
温かなお湯に体が温まったからか、涙が急にあふれ出して止まらなくなった。

「お気持ちはお察しします。昔からお優しい性格の紅姫です。目の前で起きた悲劇に心がついて行かないのはわかります。でも、王は同じように命が消えていく場所で必死に戦ってきたのですよ。王のお気持ちもお考え下さい。」
富さんの言っていることはもっともだと思う。

いつの時代だって命に重さの違いなんてない。

人が死ねば悲しい。
人の命を奪えば罪の意識に心がつぶれる思いだと思う。

「もうすぐ王がいらっしゃいます。きっとお疲れでしょうから、その疲れをお察しください。」
「・・・はい・・・」
そう返事しながら、私はあふれて止まらない涙を必死に止めた。