「菊姫と出会えて、千代は幸せでした。あの世でもお供いたしますから、ご安心くださいね。」
そう言って女官は菊姫の髪を撫でた。
ほかの誰よりも短い髪で勇ましい姿だった菊姫。

どこか幼さの残る菊姫はきっと私よりも年下だろう。

血の気がなくなったその顔を何度も何度も撫でたあと、菊姫の胸に深く短剣を突き刺した女官は同じ短剣で自分の首を深く切り、息絶えた。



目の前で起きている光景は夢のように遠くで起きているように思える。

でもこれは本当に起きていることだと、生々しい血の匂いや、温度を感じる。


耐えられない・・・。
私はちっぽけすぎて、何もできない。できなかった・・・。