「だめ!だめっ!」
私は地面に菊姫の体を横にして、必死に短剣が刺さっている場所を見ようとした。
「姫っ!お退きください」
兵士たちが私の体をどかそうとする。
きっと王の前で血を流して倒れていることは無礼に当たることなのだろう。
菊姫の世話係や家臣たちが慌てて菊姫の体を王から預かり、目に触れない場所へ移動させようとしている。王に頭を下げて無礼を謝る人もいる。

それどころじゃないのに。命が危険な状態なのに。

「動かしたらダメ!ちゃんと止血をしないと。」
この世界にはきっとないであろう医学的な知識を必死に伝える。
「おどきください」
一人の兵士が私の体を邪魔そうに力で押し、私は転んでしまった。

「動くな!」
その声に、誰もが一瞬で動きをとめた。