懐かしそうに景色を見る鉄平。

私はその横顔を見つめる。

今こうして横顔を見つめられていることも幸せなことだ。


『今から行くから。10分で着く。待ってられるよな?』
あの日、鉄平を呼んだのは私だ。めったに言ったことのないわがままを言って、鉄平を呼び出したのは私。
『咲菜。愛してる。すぐに行くから、待ってろ。』
これが鉄平が最後に私に言った言葉だ。

私は愛してるとも、ありがとうとも言えていない。

私があの日わがままを言わなければ、鉄平は今も・・・