「変な話し方をするな。他人行儀な。それにこんなに簡単な文字を聞くとは、やはり体調が悪いのか?それとも目に異常があるのか?」
「少し聞いてみたかっただけ・・・です・・・」
戸惑いながら言うと鉄平は心配そうに私の額に手をあてた。

私たちは敬語を使いあうような仲ではなかったようだ。

「これは『我が国は王のもとにある』と書かれている。昔、私がまだ皇子だった時にこの場所で咲と話をしたことを忘れたか?王があって国があるわけではない。国があるから王が必要なのだと。私が王になったらこの刻印も変えようと思っていた。もしかしてそれを気づかせるために咲は私に今質問したのか?」
私には過去の記憶はない。
あるのは違う世界の鉄平と咲菜としての記憶だけだ。

「だめだな。王になってから忙しさに追われて大切なことをおろそかにしていた。いつも咲は私にきづかせてくれるな。昔からそうだ。皇子として距離をとる者ばかりだったが、咲だけは違った。簡単に私と距離をつめて、どんどんと私の心に入り込んできた。」