「私たちの命はたくさんの人に支えられて想われて生かされているのだ。咲菜、私のために命を投げ出すなんて二度としないでほしい。」
「・・・ごめ・・・」
「話さなくていい。わかってくれればそれでいい。・・・よかった・・・生きてくれてよかった・・・咲菜」
鉄王は震える声で私の名前を何度も何度も呼ぶ。

その時・・・
かすかにお腹の赤ちゃんが動くのを感じた。

生きてる・・・よかった・・・
お腹に手をあてて安心して涙を流す私に、鉄王もすべてを察してもう一度私と赤ちゃんの命を包み込むように抱きしめてくれた。

鉄王は濁流に身を投げた私を、馬から飛び降りて助けてくれたらしい。

私を助けたあとも馬を走らせて何とかいのちからがらこの高台に避難してきたことを教えてくれた。

「声が聞こえた」
「え?」
私の体を冷やさないように体を後ろから包み込みながら鉄王は話す。