その場に突っ立ったまま私が混乱していると、男性が「こっちに座って一緒に食べましょう」と手を引いて椅子に座らせた。まるで自分が恋人であるかのように……。

テーブルの上に並んでいるのは、ご飯とお味噌汁、そして私の大好きなハンバーグとサラダだ。とてもおいしそうだけど、知らない人が勝手に作ったと考えると恐怖で食欲がなくなってしまう。

「いただきます」

目の前に当たり前のように座った男性は笑顔でそう言い、食べ始める。でも私はただ固まったまま目の前に置かれたハンバーグを見ることしかできない。

「どうしたんですか？ハンバーグ、お好きなはずですよね？」

どうして私の好きな食べ物を知っているんだろう……。私は何とか震える声で「あなたは誰ですか？」と訊ねる。

「ああ、自己紹介がまだでしたね」

男性は箸を置き、私をまっすぐに見つめる。そして自己紹介を始めた。

「僕の名前は我妻樹（あがつまいつき）と言います。職業は公安警察です」