ーーピーン、ポーン

通勤ラッシュの前だからか、駅はとても静か。


改札を通ろうとすると、
目の前に大きな背中があった。

私はその人の後ろを追いかけるようにして改札を通った。

前の人は通り過ぎると
勢いのよく私の方を向いて謝ってきた。


「すみません!横入りする感じになってしまって」


「ふふっ。全然大丈夫ですよ」


一生懸命謝る姿に思わず笑ってしまった。


…ん?なんかこの人見たことがあるようなないような??


それは男の人も思ったのか目を丸くして私を見てくる。


「もしかして前も会いましたよね?」


「ふふっ、会いましたね」


彼の一つ一つ表情が変わるところがおかしくて笑ってしまう。


「なんで笑うんですか!!俺、真剣なのに!!」


「ごめんなさい。表情変わるところがおかしくて」


「え、俺表情変わってた?」


「はい。変わってました!」


「あのもし良かったら2度会えたのもご縁だと思うので、今日の夜どっか行きません?」


「…」


私はいきなりのことに黙ってしまった。


「あ、知らない男に誘われても嫌ですよね!!すいま…」


「行きましょう。今日暇なんです」


私が微笑んでそう言うと、
彼は安心したように


「やった!!美味しいお店探しとくんで!」


「楽しみにしてます」


「じゃあ連絡先しましょ」


「はい!」

そう言って連絡先を交換して


「じゃあまた」


「はい、また」


私たちはそう言葉を交わして
反対方向に進み始めた。