「えっ、土岐家の姫君……、ですか……」


 続いて幼馴染の明智光秀に相談してみたのだが。


 私が妻に迎えたい女性がいると聞いて、最初は目を輝かせて話を聞いてくれていたのに。


 土岐の有明姫の名前を出した途端、明らかに光秀の顔色が変わった。


 「なんだか最近若殿が、土岐の御屋形様の元に頻繁に出入りしているとは聞いていましたが、そういうことだったのですか……」


 私が迷惑な行動をしているといった口ぶりだった。


 「なぜみんなして、私にあきらめるように説得するんだ? あの姫にどんな問題があるというんだ?」


 「いえ、そういうわけではないのですが」


 結局光秀も、お茶を濁したような物言いで、はっきりとは理由を述べなかった。


 私が御屋形様の娘を娶って、次期斎藤家当主となる嫡男が誕生するようなことがあらば、御屋形様はこれ幸いにと外戚として政務に口を出してくるようになり、せっかく父が国内をまとめてきたのに和が乱れる可能性があるだとか。


 取って付けたような将来への懸念材料をいくつか提示してきたものの、どれもこれも私を納得させるものではなかった。


 父はともかく、私が味方だと思っていた稲葉や光秀がこぞって私の意向に反対の意を示したことは、私にとって衝撃だったが。


 かと言ってそう簡単には有明姫をあきらめることもできないし、別の方法を考えることにした。