「あ、申し訳ありません。自分の夢物語ばかり長々と」


 自分の話ばかりしているのを悟って、詫びたところ、


 「いや、そなたの話を聞いているだけで楽しい。私も夢の一端を担っているような気持になる」


 姫は微笑みながら私の話を聞いていてくれた。


 「高政はいずれは、京の都に立つことができるのだな」


 「はい、家督を相続した後に、必ず。……その際は姫も是非、都にまいりませんか」


 「私が? 京に!?」


 不自由な身を嘆く姫に、思わずそんな提案をしてしまった。


 「土岐家の名代として、姫も一度京の都をご覧になっておくべきです」


 「一度……。京の都を見てみたい」


 「ご一緒しましょう。私がお供いたします」


 「まだ当分先のこととは思うが、忘れるでないぞ」


 あの父は病一つせず頑強で、当分万が一のこともないだろうから、私が家督を継ぐのはいったいいつになることやら。


 以前はこの美濃の舵取りをしなければならないことに対し、重荷にしか感じていなかったが、家督を継げば京に行くことができる、それが数少ない夢の一つだった。


 そして今日その夢に、この姫を是が非でも連れて行ってあげたいというものが一つ加わった。