「え?」

 あたし、何かしたっけ?

 自分の所為にされてちょっとムッとしたけれど、そんな軽い怒りは陸斗の眼差しを見ると同時に吹き飛んだ。


 顔を上げた陸斗の目は熱っぽくて、その熱はあたしを(から)めとる。

 また腕を掴まれて引き寄せられた。

「その浴衣、すげぇ似合ってる。浴衣に合わせたメイクも、キリッとしててカッケェ」

「あ、ありがとう……」

 間近に顔を寄せられて褒められると、ぎこちないお礼しか言えない。

 そんなあたしに、陸斗の言葉は続けて伝えられる。


「そんな格好で……。灯里、お前は俺を何度惚れさせれば済むわけ?」

「はい?」

 意味が分からなくて聞き返すと、掴まれている手が陸斗の胸に当てられた。


「分かるか? 俺、今すげぇドキドキしてんだよ」

「っっっ!」

 わ、分かりませんーーー!


 陸斗の胸板の感触が掌に伝わって、彼がドキドキしているかどうかなんて全く分からない。

 掌が熱い……。