何となくしんみりした雰囲気になっていたけれど、大好きな人との花火大会デートだ。
 楽しまないと損に決まってる。


「行こう」

 そう言って先に足を進めると、さくらちゃんも「うん」と笑顔で付いて来た。



「お待たせ。早かったね、待たせちゃった?」

「いや……」

 さくらちゃんは花田くんと話しているし、あたしも陸斗と話そうと近付いたんだけれど……何だか陸斗の様子がおかしい。


「陸斗?」

 不思議に思って下から覗き込むように小首を傾げて名前を呼ぶと、突然手を掴まれて引っ張られる。

「え? ちょっと! 陸斗!?」

 転ばないようにと足を動かすと、どんどんその場所から離れて行く。


 ちょっ、さくらちゃん達とはぐれちゃうよ。


 そう焦って頭だけ振り返ると、さくらちゃんが笑顔で手を振っているのが見えた。

 あとはそれぞれで、ってことかな?

 とにかく離れても大丈夫そうだったので、あたしは転ばないように陸斗に付いて行くことに集中した。