「だとしてもわざわざ近くのアパートを選ぶとか、灯里に付きまとうんじゃねぇ」

「好きな子の近くに居たいと思うのは自然な事だと思うけどね」

 怒りを滲ませている陸斗と飄々(ひょうひょう)としている杉沢さん。

 温度差のある二人のやり取りに、あたしはどうするべきかと悩んだ。


 とにかく、あたしはもう陸斗と付き合っているんだから、杉沢さんの気持ちには応えられないってハッキリ言った方が良いよね。


 そう思って口を開こうとしたとき、杉沢さんが「でも」と言いながらあたしと陸斗の繋がれた手に視線を向ける。

「案の定と言うか……先を越されちゃったみたいだな」

 あたしが言う前に、察したらしい。


 すると陸斗がこれ見よがしにあたしを後ろから抱きしめた。

 嬉しくてドキドキする鼓動。
 でもこんな往来(おうらい)で抱きしめられて恥ずかしい気持ちもある。

 やめてと言うべきかと迷っているうちに、陸斗が話し出す。