「カッコイイね。誰を待ってるんだろう?」

 少し遠巻きにそれを見ている女生徒のそんな言葉が聞こえて来る。


 校門に近付くと、人だかりの中心人物の姿が見えて来た。


「あ」

 思わず一文字だけ声を出して足を止める。

 口も“あ”の形のまま止まってしまう。


 知っているその人の姿を見てあたしは思った。


 忘れてた!

 そうだ、この人がいたよ!


 何かを忘れていた様な気がした。

 何かが引っかかっている気がした。


 それはこの人のことだったんだ。


「あ、灯里ちゃん。やっと会えたね」

 そうあたしに声を掛け、胡散臭いほどのイイ笑顔をこちらに向ける彼。

 獲物を狙う蛇の様な目を向けながら、爽やかに笑う彼――杉沢さんに、あたしはヒィ!? という叫びが喉元まで出かかった。