返してって言えば返してくれるかな……どうだろう?

 そんな不安もあったけれど、今からメイクをするならメガネよりコンタクトの方が良いかと思い直す。

 持ち歩いているバッグには、念のためワンデイコンタクトを一組入れてある。


 あたしは洗面台で顔を洗うという杉沢さんに付いて行き、手を洗ってコンタクトを入れた。

「コンタクトあんならずっとそれにすればいいじゃん。なんでこんなダッサイメガネつけてんだよ?」

 そしてまだお兄さんがウザい。

 流石に無視し続けるのは不味いかな?


「……事情があるんです」

 仕方なく、そう一言だけ答えた。


「はー? 何だよその事情って?」

 と、答えたら答えたでまたウザかったので、これは答えなきゃ良かったかもと後悔しているうちに杉沢さんも顔を洗い終える。


 先程の縁側近くの床の間らしき部屋に案内されて、目の前にメイク道具一式を用意される。