「……彼女じゃ、無いです」

 あたしはこの場で初めて声を上げた。


 彼女じゃないという事をちゃんと伝えておかなければ何をされるか分からないと思ったから。


 あたしの言葉に杉沢さんは虚を突かれたように瞬きし、お兄さんは「嘘だろ!?」と叫んだ。

「恋人つなぎしてたじゃねーか! あんなの友達同士じゃしねぇぞ!?」

「うっ、それは……そうかもしれないけど……」

 言葉に詰まるあたしに、杉沢さんは「ま、どっちでもいいけど」と嘆息する。


「どっちにしても日高に近しい人間ってことだろ」

 そう言うとまたあたしの顔を舐めまわすように見る杉沢さん。


「何もせずに帰してやってもいいんだけど……。それも何かもったいない気がするなぁ……」


 もったいなくないです!
 何もしなくていいです!!


 固まるあたしは内心そう叫んでいた。