お兄さん関連で記憶を掘り起こしたらすぐに思い出せた。

 一度ちょっと見ただけだけど覚えている。


 だって、あの人メイクしてたから。


 あたしの周りでメイクしてる男の人っていなかったし、あの日は丁度陸斗くんにメイクをしようって日だったから。

 イケメンでもあるけれど、あたしはメイクつながりで彼を覚えていた。


 とはいえ、それをわざわざ言う必要もないでしょう。

 そう思って黙って成り行きを見守っていた。


「はぁ!? 学校行事中の学生連れ去っておいて大丈夫なわけねぇだろ!? お前バカか!?」

 一通り話を聞いた杉沢さんが煙草の火を消しながら叫ぶ。

「ああ、馬鹿だったな。分かってた」

 そしてすぐに冷静になりそう言ってため息を吐き項垂れた。


 頭を上げると、彼は視線をあたしに向ける。

「で、この子が連れてきた日高の彼女?」