すぐに返事はなかった。

 少し待って、赤信号で車がいったん停止するとお兄さんは口を開く。


「……商店街裏にある川原近くの空き家だ。連絡しとけ」

 端的にそう告げる。


「……」

 うん、忘れてたんだね。

 やっぱり残念な人だなぁと思いながら、あたしはスマホを取り出した。


 実はさっきから何度もスマホが震えていたんだ。

 消音モードにしていたから音はならなかったけれど。


 見ると、案の定着信やメッセージが皆から送られて来ていた。

 電話は多分かけちゃダメなんだよね?

 そう思って陸斗くんのメッセージを開く。


《無事か? 今どこにいる?》
《どこに向かってるか分かるか?》

 短い用件だけの文章に、彼の焦りが伝わってくるみたいだ。

 あたしはすぐに返事を打つ。