こんな乱暴な人と関わることなんてないんだろう。

 さくらちゃんが明らかに怯え始めた。


 沙良ちゃんもどうにか出来ないかと思っていそうな表情だけれど、下手に刺激するわけにもいかないといった感じ。

 美智留ちゃんは怯えつつ、もう一度あたしを離してくれるように頼んだ。


「でも、集合時間とかもあるから……取りあえず離してくれませんか?」

「それまでには帰すっつってんだろ!?」

 でもお兄さんはイライラするだけであたしを離してはくれない。


 このままじゃ平行線だって思ったんだろう。

 お兄さんはあたしにだけ聞こえるくらいの声で呟いた。


「ったく、いっそ殴って黙らせるか?」

「!」

 女の子を殴るなんて平気で言うなんて信じられなかった。

 『いっそ』なんて言うくらいだから、今すぐ実力行使しようと言うわけじゃないんだろう。

 でも、あたしはこのお兄さんが結構キレやすいってことを知っている。

 このままだと本当に誰か殴られかねない。